当直中にちょっと遊びでやってみたSSSです。 こんなだけど、また現代版だけどマニカルでーす! チロルチョコに賭けた熱い想いがあった。 チロルチョコに賭けた熱い想いがあった。 少なくともカルディアはのつもりだった。 たかが20円のチョコと侮るなかれ。チロルチョコは値段よりもずっと美味しいし、変わった味がたくさんあってサイクルも早いからまず飽きない。 普通の高校生だが少々病弱でバイトが出来ないカルディアにとっては学校帰りのささやかな楽しみだったのだ。 「なのに売り切れなんて、ありえねェ」 カルディアは憤慨をもう一度口にした。 「三軒もコンビニ回ったのに」 「だからってなんで俺がゼミサボらせられるんだよ、しかもお前のコンビニ巡りなんかのために」 「だって」 三つの年齢差以上に温度差のあるボヤキにカルディアは頬を膨らませた。 「今回の新作はリンゴ味だったんだぞ、まさに俺のためにあるチロルじゃねぇかよ」 カルディアにとってチロルとリンゴの組み合わせがどんな吸引力を持つかをマニゴルドは知っている。カルディアに次の新作がリンゴだと教えたのはマニゴルドなのだから。 なのになぜ今になって欠片も興味ないような顔をするのだ。授業が終わって速攻でコンビニへ向かったのにたった一人の先客に全て買い占められていたと憤慨するカルディアに欠片も同情している様子がないのはなぜだ。 「……なぁ、」 今日に限ってそっけない幼馴染を睨んでいる内にカルディアはある事に気付いた。 「お前のカバン、なんでさっきからガサガサ言ってんだ?」 「そ…んなはずはねぇだろ」 年上風を吹かせてばかりの幼馴染だが、本人が思ってるほどポーカーフェイスが得意ではない。 「そういや電話ン時、バックでロー○ンの音楽聞こえたっけ」 「そ、うだったか?」ちょっと裏返った声で確定だ。 「ウ・ソ」 カルディアはニヤリと笑うとマニゴルドの右腕をぎゅっと両腕に抱えた。 「コンビニからお前ンちに行き先変更!」 意気揚々と告げればやれやれと降伏の溜息が頭上から零れる。 「……なんでこういう時だけ気づくんだよ」 「バーカ」 鈍感蠍座のくせに、なんて失礼な言葉は聞こえなかったことにしてカルディアは笑った。 「お前ばっかり、じゃねぇんだからな」 「……降参」 チロルチョコに賭けた熱い想いがあった。 だがどうやら想いは自分だけのものではなかったようだ。それに満足してカルディアは一回り大きな腕の中でもう一度笑った。 チロルチョコに賭けた熱い想いがあった。 で始めるSSを書けというお題にぶつかったのでチャレンジしてみました。 チロルチョコ、10円だと思ってたら20円だったよ……。 |