オフ原稿の方でマニが夢を見るシーンを書いてたときに、ついでに書いてたカノミロ短文を見つけたのでサルベージです。 カノミロ短文(オチも何もないです) 夜半にふと目が醒めた。 何かを叫ぼうとする寸前のような、そんな胸の苦しさに意識が引きずりあげられて、逃げるように目を見開いた先には見慣れた天井。 「…………ゆめ、か」 溜息とともに小さく呟く。 そっと身を起こし、汗で額に張り付いていた髪をかき上げる。 細かい事はもう覚えていない。 ただ、目覚める寸前までのとてつもない絶望感は身体の奥にまだ残っていて、胸に積もる漠然とした悲しみが呼吸を苦しくさせる。まるで水の中で無力にもがいているような、全身にまとわりつく感覚。 「ん……」 小さな声――あるいは寝息にハッとする。この部屋には――否、この寝台にはもう一人の存在があったのだ。 起こしてしまっただろうか。 そんな危惧でしばらく気配を窺ってみたが、傍らのぬくもりが動き出す気配はない。 それを見て取ってほっと肩から力を抜く。こんな姿を見られたくなかった。 自らの過去の所業を振り返るならともかく、わけの判らないただの夢に魘されて跳ね起きるような心の弱さでは、傍にいるのに相応しくないと思われたら。 今の自分には、それこそが真の絶望の形だ。 「……っ!?」 不意に腕を引かれて、予想していなかった身体は仰け反るように、引かれるまま無様に倒れ込んだ。狭くはないが広くもない寝台の上だから、傍らを押しつぶさないようにするのが精一杯で 相手の腕をかすめるように肩から落ちる。 「お、おい」 「だいじょうぶ、だ」 どさりと結構な振動があったから今度こそ起こしてしまったと思うのに、見上げた先で金の睫毛は伏せられ、空色の瞳は隠れたままだ。 なのに。 「俺がいる、から……」 さっきまでは自分の腕の中で、胸元にその額を擦り付けるようにして眠っていたはずなのに、今は逆に自分の頭を抱きかかえるように両腕を回して、まるで包み込むように。 「ちゃんといるから」 夢うつつの中の呟きなのに、不思議にその声はきっぱりと、揺るぎない響きに満ちている。 「だから、大丈夫」 静かな部屋の中で聞こえるのは互いの呼吸で、触れ合った場所から伝わるのは互いの鼓動。重なってはすぐに離れていくリズム。……でもまた重なる。 判っている。この男は強くて烈しくて真っ直ぐで、優しい。 抱きしめている振りで、その実縋るように両腕を回すしかできないこんな自分を正面から受け止め、その全身で包んでくれる。 その彼が大丈夫と言った。傍にいるからと。 カノンは小さく微笑んだ。 彼は嘘はつかない。だから全ては大丈夫なのだ。 「……おやすみ、ミロ」 だから彼の腕の中で目を閉じる。なにも怖いことなどない。 今夜は、もうこわい夢は見ない。 十数年も「影」でいた人は、今でもたまに自分をDisってるんじゃないかなぁとか妄想。 オチもない小ネタなので、こっちに。 |