単刀直入に拝啓
2010/09/09 (Thu)
* またアニメ9話ネタ!
アニメ9話ネタです。またもや短いです。一発芸的なSSSSです。

富嶽じゃないよ、日輪だよ!


「――して、修理は終わったのか」
 元就の問いに赤川は畏れながら、と口を開いた。
「外装の方はほぼ終わりましたが、ふが……に、日輪の陸用駆動部分に毛利方では再現出来ない部品があるようでして」
 大型歯車の形状がこちらの技術者の計算と実物では違うらしく、となにやら続ける赤川の言葉を元就は遮った。機巧などに興味はないので細かい事が判るわけではない、元就が知りたいのは結論だけだ。
「捕えてある長曾我部方の技術者から聞き出せ」
 手段は問わぬ、と言いながら元就は少し思案した。
「あの鬼の手下だ、鞭は効かぬゆえ甘言で釣るがいい」
 打倒豊臣の策が成った暁にはこの要塞を鬼に返す心積もりもある、くらいの事を言えば、その長によく似て単純な男どもは途端に協力的になるだろう。
「心得ましてござりまする」
 赤川が一礼する。しかし懸念はまだあるらしい。
「ところで元就様、このふが……日輪の大筒ですが、元のような位置に取り付けると、船の重心が前に来てしまうため、多少揺れやすくなるようです」
 長曾我部たちは操船技術で補っていたようですが、と続く言葉を意に介す必要はない。
「毛利水軍を甘く見るでないわ」
 下々からかき集めた長曾我部の水夫などより、それを専門にしているこちらの水軍の方が優れているに決まっている。
「大筒は前と同じ位置に取り付けよ。あの巨大砲こそがこの新要塞の要ぞ、後方につけて飛距離が落ちるばかりか、長曾我部なぞに劣ると思われるのは断じて許さぬ」」
「畏まりました」
 元就の指示に赤川が手にしていた帳面に慌しく書き付けていく。ちらりと見ればそこにはまだ幾つか文章が並んでいる。
「ほかに、何かあるか」
「実は」
 珍しく元就から聞いてやるとほっとした顔で赤川が顎を小さく引き、また口を開く。
「ふ……日輪、の正面ですが、あの鬼瓦はただの飾りではなく大筒の重さを支える以外に、中心部で作業する者たちの保護の目的もあったようですが、今回あの瓦をいかがいたしましょうか?」
 その問いの答は決まっている。
「我が乗る要塞に鬼は不要ぞ」
 だが、色々な理由であそこに鉄塊が必要だというのなら、代わりのものを作るのはやぶさかではない。
「代わりに日輪を象った意匠のものを作らせよ」
「ご命令どおりに」
 赤川は帳面に短く書き付け、また顔を上げた。
「では、ふ……の、鬼瓦は破壊してしまってよろしいでしょうか」
「いや、あれはあれで取っておけ。日輪が完成するまで、あの哀れな残骸を眺めて鬼の吠え面を想像して暇を潰すとしよう」
「……は、」
 これで赤川の懸案は全てらしい。ほっとした表情で帳面を袂にしまった部下に元就はちらりと視線を向けた。
「ところで赤川」
「なんでございましょうか」
「修理の工程はそなたの一存に任せる。工費がどれだけかかっても構わぬが」
 だが、と続ける。
「次にその名を言い間違えたら、その首なくなると心せよ」
「……は、」
 ぎょっとした顔の部下を置いて元就は踵を返した。

++++
赤川さん、まさかの死亡フラグ!(笑)
いや、元就様のお心を察する事が出来た赤川さんだから、こんな事ないって思ってますけど、ちょっとやってみたかったのです(笑)。


こんなSSSでもそのうちまとめてSSSコーナーに更新すると思います。SSSとして再録するまでは消さないのでたまに見に来てやってくださいませー。
期間限定公開はよほどの事ない限りやりませんのでのんびりお付き合いくださいませ。
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