ネタバレ内容ですので気をつけてください。 ENDネタですのでそういう内容です。暗いですのでご注意ください。 <アニキ緑ルートやった人のみ!のSSS←暗いですよ> 残光 社殿を出る寸前でふと足が止まった。 そうしないようにと意識し、歯を食いしばって拳を作って、全身に力を入れていたにもかかわらず、足は止まってしまった。 「どうした、元親?」 一歩を先に進んでいた友人がこちらの気配が止まったことに気付いて振り返る。 「いや、……なんでもねぇ」 対して元親は首を小さく振った。 どうしたのか、今までよりも友人がやけに眩しく見えて瞬きを繰り返す。それでも、金色の甲冑をつけた友人の姿は元親にはやけに眩しいままで、その目をまともに見ていられない。 「……悪ぃ」 その理由が少し判った気がして、元親は手を小さく振った。 「ちょっと先に行っててくれや」 「…わかった」 浜で待っていると言い置いた家康が先に立ち去っていく。 家康と自分の間で困惑したようにこちらを伺う野郎どもにも先に行けと促して、誰の気配もなくなったところでようやく元親はくるりと踵を返した。 もう一度社殿の中へと向き直る。 「……なぁ、毛利よ」 今はもう誰もいない社殿へと呼びかける。 「あんたには、俺がああいう風に見えてたのかい?」 返事はない。当然だ。 その遺骸を自らの焔で灰になるまで見届けて、そうして厳島から瀬戸海へ渡る風に乗せた。 もう毛利元就はいない。いないのだ。 なのに――だからなのか、胸のどこかが冷たい。氷のように冷たい風が終始吹き抜けてしまってるように。 「だとしたら、あんたの策は見事に成ったわけだ」 笑うしかない。 長い長い時間を瀬戸海を挟んで直接的間接的に戦っていたから、毛利元就という男を誰よりも知っていた。理解していた。 だから、あの言葉が彼にどんな効果があるか知っていた。 知っていたからわざと正面からぶつけたのだ。それを悔やんでいるわけではない。あの男は、あの言葉を投げられるに値するような行為をしたのだ。 だから自分は、間違ってはいない。……そう思うのに。 「なぁ、毛利よ」 あんたのことなんか、きれいさっぱり忘れてやる。 心からそう思ってそう言い放ったはずなのに。 一瞬前まで友人だった男を眩しくて直視出来なくなったこの目に翠の残光が消えない。まるで彼が作ったあの翠光の幻のように。 「……結局、あんたと俺との腐れ縁は消えねぇんだな」 呟いて元親はきつく瞼を閉じた。 いまだ鮮やかな翠の残光をどこにも行かせず、永遠にこの身の中に共に存るために。 |