カプコンからのメールで暗躍毛利が確定したようなので妄想してみました。 突発妄想なので雰囲気だけです。(3ネタです) (不在の間の置き土産その壱です) SSS08:やんでれ ……全部、失くしちまった。 常は晴れ渡る空のようにからりと、そしてどこまでも続く大海原のようにおおらかに笑う男らしくない、珍しくも苦しげな声だ。 広い肩を落し、わずかとは言え力なく項垂れるその姿に、無意識のうちに眉根が寄りそうになって、無表情を作り直す。 「俺は……、」 「今更何を言う」 ぴしゃりと声を弾いたのはそんな言葉を聞いていたいわけではないからだ。 「そのような繰言は詮無き事ぞ、長曾我部」 「……判ってるさ」 しかしいつもなら激しく食って掛かってくる男も今日ばかりは反撃してくる勢いさえないらしい。 「失ったら戻りゃしねぇ。……そんな事くらい、俺だってよく判ってる」 初めて聞く苦い声だ。 いつもの気楽で気侭な船旅の後、一ヶ月ぶりに戻った彼の国で男を出迎えたのは無数の死体だ。焼けた大地に二度と物言わぬ冷たい体。落ちていたのはかつて友人だと思っていた者の旗。 男は彼にとって大事なものを二つ失った。 それが男をひどく消沈させている。それは毛利にも判っている。……だがだからといって、男を見逃してやる気はない。 「だが、まだ貴様には」 然るに僅かに声音を変えて、毛利は自らを示した。 「我がいるではないか」 「…………毛利?」 ゆっくりと上がった眼差しは、まるで幻か、あるいは幽霊でも見るかのように胡乱だ。 それも無理はないだろう。今の今まで自分とこの鬼は、敵という関係以外の何もなかったのだから。 訝かしむような光を隠さないその隻眼を真っ直ぐに見返して薄く微笑む。次の言葉はとうに用意済みだ。 「もしこれが我であるなら、まず疲弊した国力を戻す」 ゆっくりと、ずっと用意していた言葉を口にする。 「……次に、石田軍と手を結ぶであろうな」 「石田と、か?」 意外そうな声に、この男が判断力まで失ったわけでない事を知る。徳川家康を敵と認識したこの男が共闘するなら石田しかいない。それは男も可能性として検討していただろう。だが、何かを失ったわけでも徳川と敵対する理由があるわけでもない毛利元就がこの選択をするとは思っていなかった。 そんな思考を滲ませた声音だ。 「石田は徳川を憎んでいる。徳川に滅ぼされた貴様とは目的が同じであろう」 「……じゃあ、あんたは?」 当然の問いだ。 長曾我部元親は徳川家康に裏切られ、四国を失った。復讐のために、似たような思いを持つ者と共に戦おうとするのはごく自然の流れだ。 だが鬼も馬鹿ではない。石田と元就に接点がない事くらいは判っているのだろう。 「知れたことよ」 だが鬼ごときにこちらの思考を読ませるほど緩いつもりはない。元就は髪一筋ほども表情を変えずに男を見返した。 「毛利家の繁栄のために、最も良い選択をしたまでの事」 最初の部分を強く発音して言い切れば、そっか、と男が小さく頷く。納得した響きの声に一瞬だけ元就の口元が震えたが、隻眼の男はそれに気づかなかった。 「……石田に会ってくる」 代わりに、それまで元就へ突き出していた碇槍をくるりと回して肩に担ぐ。 「決めるのは、奴の心を訊いてからだ」 「そうか」 言うなりさっさと歩み去っていく後姿を見送る。 その長身を見つめて、…愚かな、と毛利は小さく呟いた。 相変わらず幼く単純で愚かな男だ。 徳川家康をなぜ信じたりしたのだ。たかが一度共闘したからといって、なぜその後も不用意に信じたのか。 なぜあんな者に笑いかけた。自分には絶対に見せない顔で。 そしてなぜ今、今度は自分を信じようとするのか。 気づくと眉根が寄っていた。そして口端が引き上がっているのにも気付く。先ほどからずっと笑みを抑えようとしていたものを、とうとう失敗したようだ。だがいい。もう鬼はいない。 「愚かな男だ」 今度ははっきりと、小さく呟く。 長曾我部元親にとって憎むべき最大の敵も、信じきれずに懊悩する味方も、全て自分であるべきだ。 「……貴様には、我がいる」 それが判らないのなら思い知らせるまでだ。 「貴様はもう我の手の内ぞ」 もっとも、と元就は薄く笑った。 今更気づいたところで、もう鬼を手放す気などないのだけれど。 (暗躍する毛利、の一言だけからの妄想です。暗躍して天下分けてまで手に入れたかったのね、的に思ってください。そしてこんなでも、アニキもアニキなりに多分色々考えてるんだと思いたい……てか、すみません、頭良い人書けないんですバカだから。……orz ) |