問題発言 |
「前かがみ?」 兵部は首を傾げた。 言葉としては、もちろん知ってはいたが、それをカズラが特別の単語のように言う意図が判らなかったからだ。しかもそれを連発されたカガリの半泣きの反応も判らない。 二人の思考を透視すればいいのだろうが、そこまでするほど気になるわけでもない。 然るに兵部は大騒ぎの子供たち二人を眺めて考えた。 動作としては判る。腰のところで上体を曲げ、姿勢を低くすることだ。 ちょっと背丈に差があって普通だと視線がずれる人間を見つめる時のような。 例えば――。 兵部はぱっと顔を明るくした。 「ああ、真木が僕を見てなってるようなやつ?」 子供二人がギャーとかさらに悲鳴を上げたその理由は、彼には判らないままで、カガリを放り出して脱兎のごとく出て行ったカズラがまた『皆に相談』しているなんて、そのままミサイル発射の為に海面へ出た兵部は知らなかったのだった。
|
本誌176話の宇宙戦艦カタストロフィ号のちょっと手前の図書室での会話から。 |