チルチルは僕も好き

 

「……録画、本当にするんですか?」
 もう一度訊いて、でも兵部はこっくりと頷く。
 そうして言うには。
「チルドレンたちも見てるみたいだしさ、僕もこのくらい知ってないと、彼女たちと話が合わないだろう?」
「はぁ……」
 ジェネレーションギャップとかいう単語以前の問題で、今までだって話題が噛み合った事はあまりないんじゃないだろうか、と内心思ったが、真木は賢明にもそれを音声にするのは控えた。
 仕方ないので言われた通りに録画予約をする。
「では明日、録画をお見せしますね」
 本に視線を戻してしまった兵部がうん、と生返事をよこす。さっきの言葉通りで、本当に見たいわけではないのだろう。
 やれやれと溜息をつきつつ、真木はブルーレイプレイヤーの電源を落とした。
 大体にして、純粋な子供向け番組が深夜28時にやるはずがない。放送コードギリギリのこんなロリコン番組がこのパンドラの機材にデータとして書き込まれる事を不本意に思うのくらいは自由のはずだ。ありていに言えば、『パンドラの機材が穢れる!』という思考だ(もちろんそんな思考が色々な意味で正しくない事は知っている)。
 だが兵部は満足したらしく、明日が楽しみだ、とか呟いている。
 この年齢の人間が見て理解できるのか?とか、ばれたら困るような事をちょっと思ってしまった真木に兵部が思い出したように顔を上げた。
「……あ、でも君は見るなよ」
「? なぜです?」
 兵部のために録画した番組のCM部分を削除して、短時間で見られるように加工するのはいつもの事なのに。
 と、怪訝そうな真木の視線に兵部がにっこりと笑った。
「お前に萌え系になられても困るからね」
「…………」
 既に、ぽわぽわした幼女ではなく、口と性格が悪い見た目少年の年上萌えになってますが、と真木は思ったが賢明にもそれを音声にするのは控えた。
 それはそれで人として正しくない姿である事も、だからといって今更修正が効かない事も骨身に沁みて知っていたからだ。
「……大丈夫だと思いますよ」
 しかるに、真木は無難な言葉を探して答えたのだった。
 

アニメ46話:です帳 のアイキャッチで兵部が言ってた衝撃の言葉から。
さすがに本当に好きだったらびっくりです。