悪魔の左手 |
「――そんなわけで、お前と僕とで潜入するから」 「了解しました」 概要を話し終えた兵部に真木は頷いた。 危険な任務だが、真偽を確かめる必要はあったし、それにもしその話が本当なら到底見過ごせない。 そんな思考でつい厳しい色を浮かべた真木に対し、ニコニコしながら兵部が手を伸ばしてきた。 「……って、なんです?」 その笑顔に不安を感じて、思わず真木は一歩後ろに下がった。 「逃げるなこら」 真木を罵りつつも相変わらず満面笑顔の兵部がさらに距離を詰める。その白い手の平から不吉な波動を感じて真木は顔を引きつらせた。細かく高い振動はサイコメトリーの特有のものだ。 「な……何をするんですか」 「言ったろ?カップルに偽装するって」 「……聞きましたが」 兵部のずば抜けた催眠能力なら、黒を白に変えるのも容易だ。学生服の姿のままでも普通人の目を欺くなど朝飯前のはずなのに。 なのに、兵部は恐ろしいことを言った。 「サービスで、お前の好きな顔に化けてやろうと思って」 「は??」 「お前の好みの顔になってやるから、読ませろ」 思わず口がぱかりと開く。 「そんな必要……、」 ない、とまでは言えなかった。 今目の前にいるのが自分の想うそのままの姿だなんて言えるはずはなく、だからと言って兵部を振り払えるわけもない真木は、伸びてくる悪魔の白い手に声にならない悲鳴を上げるしか出来なかったのだった。 (終) |
そのうち書く予定の本の内容をちょっとしゃべってたら、友人Q嬢がさらっと描いてくれた! ありがとうありがとうありがとう!! 焦る真木がすごい可愛いんですけどこれ!!!(狂喜) 嬉しさのあまり文章捻り出してみました。あ、五月に出す予定の話は実際にはもっと違う文ですんでご安心を(笑)。 あ、この兵部はありえないほど天然さんでよろしくお願いします……(笑)。 |